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ひがんばな
「暑さ寒さも彼岸まで」
お彼岸の気象学

ほかに「暑い寒いも彼岸ぎり」「暑さの果ても彼岸まで寒さの果ても彼岸まで」「秋の彼岸は春の彼岸に似る」とかいわれるようです。おもに関東より西の気候で通用する言葉で、不思議と符合してしまうものだから毎年口の端に出てしまうのです。九月は夏の終わりであり秋の始まり。八月には平均で27日もあった真夏日が九月になるとわずか7日、熱帯夜も2日きりに減ります(気象年鑑2001)。残暑がきびしいといわれながらも、15日ごろになればハッキリと夏の光の衰えを感じさせます。ことに1日の最低気温のほうは急激に下がって、このまますがすがしい秋の空かと思わせますが、やがてすぐに秋の長雨、「秋霖(しゅうりん)」の候を迎えます。
この秋霖という秋を現わす美しい日本語、「霖」の文字は3日以上降り続く雨を意味しますが、JIS規格第1水準でないために天気予報では使わない言葉になっているということをどこかで聞いた覚えがあります。NHKでは「秋の長雨」と言い変えるようです。

秋の長雨
夏が終わりに近づくと太平洋高気圧の勢力が弱まって次第に東海上へ後退をはじめ、変わって大陸の冷たい気団が日本を覆ってくると九月中旬から十月上旬にかけて日本付近は不連続線が横たわり梅雨時と同じ気圧配置になる。つまり北高南低型となってぐずついた天気が続く。お彼岸の1週間がスッポリはまるが、これを秋の長雨型といい、この前線を秋雨前線という。また暖かい湿った空気を持ちこむ台風の襲来と相乗してしばしば集中豪雨を見舞ってくる。西日本では梅雨時のほうが降雨量が多いが、東日本はこれによって秋のほうが多い。 明ける頃には移動性高気圧がこの秋雨前線を追い遣り、太平洋側に晴天の安定期をもたらす。「秋雨は涼しくなれば晴れる」という。

このように説明されています。いわれてみればこの時期に雨の日が多いことに思いつきます。
東京地方の十五夜の夜の過去の晴天率は38%とされています。これは沖縄を除くほぼ全国的に同様の数字だそうです。高気圧に覆われる大陸においてはすんだ夜空の中に満月を見ることが容易ですが日本では秋雨前線によく阻まれる。古えのみやこ人たちが待宵(十四夜)からはじめて、十六夜いざよい、立待ち月(十七夜)居待ち月(十八夜)寝待ち月(十九夜)更け待ち月(二十夜)と執拗に名を付けて毎夜月の出を待ったのは、今宵こそは雨雲に阻まれずにという願いがあったからでしょう。約ひと月遅れの十三夜(のちの月という)とは中国にはない日本独特の風習。「十三夜に曇りなし」とは、秋の長雨が終ったのちだからでしょう。
しかし秋霖の時季を越えたといっても、秋は行楽や野外スポーツのシーズンと呼ばれる割りには、女心と秋の空といわれるように天気が変わりやすく、意外に曇りや雨の日が多いということもデータは物語っています。

一方春のお彼岸のシーズンにも「菜種梅雨」という雨季があります。 菜の花が咲き出すころに降るのでこういう名前がありますが、あの、よくお花見の計画をぶち壊してしまういまいましい長雨です。「春に三日の晴れなし」です。冬のあいだ日本のはるか南に後退していた温暖前線が三月になると北上してきて列島に接近した時に、やはり秋と同じように寒気団との攻めぎ合いでおこる現象のようです。春のあらしが吹き荒れて、妙に温かさを感じるかと思えば春雪が降り出す不安定な三月ですが、下旬になって菜種梅雨がはじまれば「ひと雨ごとの温かさ」となってゆきます。花の種を蒔き農耕が始まる時期に恵みの雨となり、さくらのつぼみにたんと養分を与える雨です。

秋の長雨「秋霖」がそのあとの抜けるような青空とうろこ雲や夕焼け雲をもたらし、春の「菜種梅雨」が四月の陽炎を呼びます。お彼岸は、ただ太陽の黄道によって昼夜が半々ということだけでなく、地上の微妙な季節移動の節し目となる時期でもあるようです。

さて、表題の暑さ寒さの納めのことです。
東京地方の春分の日と秋分の日の過去の平均の最高気温と最低気温を捜してみました。春分の最高と最低はそれぞれ4.8℃と13.1℃、歳時記をめくれば「炬燵ふさぐ」「ストーブしまう」となります。秋分の最高と最低は18.6℃と25.0℃、冷房が止まり戸外では上着を着る季節になります。春秋の光の強さと日照時間に変りはないのですがこれほどにも日夜の気温帯が違います。快適な温度が17〜18℃といわれていますが「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉を額面通りに捉えるとすれば、春の最低気温4.8℃から秋の最高気温25.0℃までが日本人が暑いとも寒いとも感じない範囲といえるのでしょうか。いえ、秋彼岸の気候は暑さに耐えてきた身体にとってもはや暑くないのであり、春彼岸の気候は冬の厳しさからようやく開放される程度の寒さというものです。やはり厳しい季節を乗り越えてきたたからこそ出る安堵の言葉なのでしょう。



【参考】
おもしろ気象学秋冬編 朝日新聞社
四季の気象と暮らしの辞典 朝日新聞社

季節ノート 倉嶋厚
近江天気歳時記 武田栄夫
日本気候環境図表 保育社 ほか


お彼岸のごあいさつに
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